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アートと社会の繋ぎ役に徹する
-美大生の可能性を切り拓く!
 ~株式会社モーフィング 代表取締役 加藤晃央(かとうあきおう)氏

2010-06-30

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東京・国分寺は、東京駅からJR中央線・快速電車で40分前後、都心から離れた多摩地域にある。同じ中央線沿線には多くのデザイン会社、アニメーション制作会社が、また多摩地域は、武蔵野美術大学、多摩美術大学、東京造形大学といった美術系大学があり、クリエイティブな環境にある。その国分寺で、株式会社モーフィングの代表取締役である加藤さん(26歳)が、"美大生と社会を繋げる事業"を起こしたのは、自身がまだ美大生の頃だった。


*PDF版はこちらからどうぞ(950kb)
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美大生と社会を繋ぐ

3年生だった2005年頃、デザインの仕事を美大生に紹介する事業を一人で始めた。「コンビニや居酒屋で仕事をするよりも、学んだことを生かせる実践的な仕事をした方が、美大生自身のためになるんじゃないかと思ったのがきっかけです。」美大生はとても純粋で、何かを創りたいという想いが非常に強い反面、社会への関心が薄い、と加藤さんは分析する。そのため、彼らの才能が社会に十分活かされていないことが非常に残念だったという。
 さらにもう一つ、地域の特性も事業の大きなベースになっている。多摩地域は美大生にとって居心地の良い場所だ。敷地が広く緑豊かで、制作環境がいいというだけではない。「地域の人たちが美大生というユニークな人種を受け入れてくれ、上手い具合に共生しているんです。アルバイトの募集案内に「美大生も可」って書いてありますからね(笑)。」だから、美大生はわざわざお金と時間をかけてまでして都心に行きたがらないのだという。そこで考えたのが、美大生と社会を繋ぐこと。彼らの代わりに都心にある企業をまわり、デザイン以外の仕事も引き受け、その仕事を美大生に繋いでいくことにした。



模索と修行

 自身も美大生だった加藤さんが、なぜ繋ぐことに専念することにしたのか。「挫折したからです。」とドキッとした答えが返ってきた。入学してすぐ、全国から集まってきた学生のレベルの高さを実感した。美大に入ったのも、創りたいという想いよりも、魅力ある面白い人たちと出会いたいという想いの方が大きかったので、そういう意味では期待どおりだったという。「やっぱり美大にはすごい人たちが集まっているなって、素直に感心しちゃって。そして、何らかのかたちで彼らと関わっていきたいと思ったんです。」
 そこで加藤さんは、美大の仲間たちにはない視点を身につけ、彼らの役に立つことができれば、いいパートナーになれるのではないかと考えた。ビジネスの仕組みを学ぼうと、ベンチャーキャピタルで、インターン生として働いた。「インターン希望者は東大や慶応や早稲田などが多かったですね。美大生は自分だけだったので珍しがられまして。採用してもらいました(笑)。」そこで得た経験は大きかった。インターン先は、投資した会社に1坪オフィスを六本木に用意し、財務など知識面でのサポートをするなど、資金による支援だけでなく、ヒト・モノ・カネによるバックアップをしていた。そのオフィスで、加藤さんは受付業務を担当しながら、ビジネスのノウハウや社会性を身につけていった。



事業の展開

 このような模索と修行の時代を経て、大学3年のときにたった一人、個人事業主として、デザイン制作を請け負う事業を始めた。そして2006年、大学4年生のときに、美大生ではない3人の仲間と一緒に株式会社モーフィングを立ち上げた。展開してきた事業は以下の通りだ。

【メディア事業】
 法人化ののち、メディア事業として2つの事業を立ち上げた。一つは美大生が作る美大生のためのフリーペーパー『PARTNER』の発刊。「美大生たちが自由に出入りして、自由に持ち寄ってつくるメディアがあればと思って。」最初は、仕事というよりも学科をまたいだサークルのようなかたちで始めたという。設立当時から続く『PARTNER』は、現在も発刊を続けており、現役美大生にとってなくてはならないメディアにまで成長した。
もう一つは、連携している美大から選出された代表作家の作品を一同に集めた美大生の総合展覧会『THE SIX』だ。「美大生と彼らの作品を社会の人に知ってもらう窓口となればと思い企画しました。」各美大の芸術祭実行委員に声をかけ、最初は関東の6つの美大でスタートし、その後関西の美大なども加わり、現在は12美大が参加する一大イベントに発展している。six-01.jpg

【ネットワーク事業】
 『PARTNER』の広告企業を探すため、同誌が3万人の美大生を対象にしていることをアピールしたところ、クリエイターをターゲットにしている会社が非常に関心を示してくれた。これらの会社が美大生のネットワークを活用したイベント企画などを求めていることを知り、その橋渡しをするネットワーク事業を展開していった。「美大生を社会に繋げようと始めた事業だったんですが、逆に社会が美大生と繋がろうとしてきたのは面白いなと思いました。」
【人材事業(HR)】
 美大では卒業生の約半分である6~7千人ほどが就職するが、一般の就職情報メディアやイベントでは、就職先を探すのが難しかった。そこで、「美大卒業生が職場でどんな仕事をしているのか、美大生が具体的にイメージできるような情報を提供しよう」と考え、美大の就職課と協働で、雑誌やWEBによる美大生のための就職情報サービス「美ナビ」の運営を開始。これも美大生にとってなくてはならないメディアになっているという。binavi-ex.jpg

【制作事業】
 会社設立当初から行っているデザイン制作事業については、「美大生たちに仕事を中途半端に経験させ、作品が簡単に世に出てしまうことが、社会に出ていく彼らにとって果たしていいことなのかどうか悩んだ時期があった」という。そこで企画開発の仕事を引き受けるようになった。商品設計の段階から関わり、実際にリサーチを行うなど社会のニーズを把握したうえで、それをデザインに反映していくというプロセスを経験できるので、単純なデザインの仕事と異なり勉強になるからだ。



繋ぎ役に徹するということ

 これまでの事業展開で一貫しているのは繋ぎ役に徹するということ。常に美大生たちの身近にいることで、彼らのニーズをつかみ、そのニーズを社会に繋ぐことで事業を展開しきた。「自分は経営者というよりも事業家といったほうが合っていますね。次々と入ってくる面白い案件を事業化するのが得意なので。」と加藤さん。しかし簡単なことではない。繋ぎ役の極意を聞いてみた。「プライドをもたないことにプライドを持っています。繋ぎ役なのでなるべく自分の色を出さないようにし、美大生たちに自由に取り組んでもらうことを大切にしています。」
『PARTNER』、「THE SIX」、「美ナビ」などは美大生によく知られているが、モーフィングという会社はあまり知られていない。それでいいんです、と加藤さんはいう。「あえてモーフィングという会社を主張しない、というところに誇りをもっています。」



アートと社会を繋ぐ

 次なる展開として考えていることは、アートと社会の繋がりだ。「もっとアートを楽しんでくださる層や市場を増やす必要があると考えています。そのための土壌づくりとして、アートに特化したPR事業を軸にしていこうと。」アート=敷居の高い美術館といった先入観を払拭し、身近な場所でアートと出会い、感動してもらうことができる社会をつくるために、「まち中にたくさんアートが存在するような試みを手がけていきたい。」と語る加藤さん。将来的なプランとして、芸術銀行という仕組みも考えている。これは作品の保管場所に苦労している美大生の作品を無料で預かり、無料または有料で社会に向けて貸し出していくというもの。「芸術銀行を通じて作品が循環し、作品の価値が高まることを期待している」。
kat-01.jpg  アートと社会をもっと繋いでいくためには、自分以外の繋ぎ役の人たちとの連携も必要だ。「点になりがちな繋ぎ役の人たちの活動を自分が繋ぎ、その活動を点から面に変え、社会へのインパクトを高めていきたい。」加藤さんの"繋ぐ"事業の可能性はどこまでも繋がっていく。


多摩信用金庫からのメッセージ

 

加藤さんは、美大生と企業をつなぐ担い手として起業され、今までにないビジネスモデルを確立されました。当金庫の顕彰制度「多摩ブルー・グリーン賞」でもこの新しいビジネスモデルが地域経済の振興に寄与するものとして「第7回多摩グリーン賞優秀賞」を受賞されご活躍されています。これからも地元美大生の活躍の場がもっと広がることを期待しています。

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