障がい者と共生できるまちへ-地域との調和を目指して
~NPO法人Ann Bee 代表 山内敦(やまうちあつし)氏
2010-06-30
障がい者の方々の自立と共生を目指して、5人の仲間とともにNPO法人Ann Beeを立ち上げた山内さん。石鹸や陶器の製造、ヘルパー事業、ショートステイ事業などを通して、障がい者の方々の支援をしている。そもそものきっかけは、大学で何気なく受けた授業。偶然のきっかけからのめり込んだ世界でふと感じた疑問は、徐々に膨らみ、いつしか強い「想い」に変わった。想いを共有する仲間とともに、山内さんが歩んだ道とは......?
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同じ想いをもつ仲間と
大学では社会学部に所属していた。受けたい授業がなく、なんとなく履修した社会福祉の授業で、偶然先生と仲良くなった。「先生が障がい者スキーのボランティアに連れて行ってくれたんです。それがそもそものきっかけですね。」山内さんは現在35歳。知的障がい者更生施設に勤務したのち、国分寺市内のNPO法人で知的障がい者の余暇支援に携わってきた。しかし、職場の仲間たちと話すうちに、彼ら・彼女らの自立に向けて、持っている力をもっと引き出せるのではないか、生活面も含めた支援の仕方がほかにあるのではないか、という想いが湧いてきた。「話ばかりしていても前に進まないので、どうすればいいのか調べたら、NPO法人なら自分たちの想っているものをスタートできそうだってわかって。想いを同じくする6人で、NPO法人を立ち上げたわけです。」
当初のメンバーは、年齢が20代から50代の各代、性別も男性2名女性4名と多様だ。
「うちはAnn Beeという名前ですが、"Bee"は石鹸の原材料がプロポリス(蜜蝋)であることに由来します。ハチは花から花へと飛び回って、色んな種族の繁栄の一端を担って生きています。我々も、ハチのように地域の調和に貢献し、我々から色々な情報を発信(=Announce)していければとの想いで、Announceを略してAnn Beeという名前にしました。」
設立は2005年8月8日。偶然にも、ハチの日になった。
*余暇支援......障がいを持った人が充実した余暇(養護学校生の放課後や社会人の休日など)を過ごせるよう支援すること
お金がない!
山内さんをはじめスタッフ全員、何もわからないところからのスタートだった。
「利用してくれる障がい者の方や職員に対して、仕事に見合った賃金を支払いたいと思っていましたが、はじめはかなり苦しかったです。」
6畳2間ほどのアパートを借りて事務所にしていたが、そのアパートは障がい者の方々の仕事場にはしないという条件で借りていたため、公民館等を毎日転々としながら活動していた。今の場所に落ち着いたのは、1年ほど経ってからだった。
場所も不安定だったが、金銭面においても決して安定はしていなかった。
「初めのうちは生きていけるかどうかもわからないところで、不安を抱きつつやっていました。立ち上げ時のお金は、援助や助成金はなく、数万円を職員で出し合って賄いました。」
障がい者の方のための施設は、その親御さんたちが建てたものがほとんどだ。第三者の手による施設の必要性を感じ、設立時は親御さんたちからの援助に頼ることを避けた。
「必要なお金は、それこそ所持品や人からいただいたものをフリーマーケットで売って稼いでいました(笑)。」
障がいがあってもプロフェッショナル
立ち上げてから2年ほどは、職員の給料はほとんどゼロだった。
「さすがにこのままでは立ち行かないので(笑)、ヘルパー事業を同じ法人内で立ち上げて、お金を増やすようにしました。現在では、石鹸・陶器・焼き菓子の製造、ヘルパー事業、ショートステイ事業の3つが柱となっています。」
陶器は、石こうで取った型に粘土をたたいてつけていくという特殊な方法で製造している。
「石鹸づくりにも陶芸にも、色々な工程があります。でも、1人が全ての工程をできる必要はないんです。10ある工程のうちの1つでもできればいい。1つでもできれば、それはその人の立派な仕事なんです。」
全ての障がい者が単純な作業を同じようにやるのではなく、それぞれの得意分野に合わせて、個性を活かして働けるようにしたい。これは設立前から考えていたことだ。
「障がい者がつくったものは、お情けで買ってもらっているようなところがありますが、それがすごく嫌なんです。障がい者がつくったものであっても、いいものはいいと認めて買ってもらいたい。」
作業は単純でも、仕事は仕事だ。障がいがあるから難しいことをしなくていいのではなく、障がいがあっても頑張ってやってみる、そんな甘えを捨てた姿勢を、山内さんは求めている。
「仕事に関しては厳しくやらせてもらっています。消費者の方からも、ようやく少しは認めてもらえるようになったかな。石鹸は今東急ハンズさんにも置かせてもらっていますが、障がい者がつくったことは一切表に出していません。」
伝説の石鹸でまちも元気に
Ann Beeの石鹸は、オリーブオイルとプロポリスという厳選された素材を使ってつくった高級品だ。しかし、ただ素材がいいだけではない。
最初は、ただ石鹸をつくろうという思いしかなく、ごく普通につくっていた。しかしある時、国分寺に湧水が出ている池・真姿の池があり、全国名水百選にも選ばれているという話を耳にした。しかも、病気の美女がその池の水で体を洗ったら、病気が治って元の美しい姿に戻ったという伝説まであった。
「これは使うしかない! と思いました(笑)。石鹸づくりに湧水を使い、石鹸の名前も、伝説の女性の名前を借りて『東京玉造小町石鹸』としました。うちの石鹸が、障がい者支援だけでなく国分寺のお土産としても役に立って、地域を盛り上げられればいいかなと。」
地域との共生
Ann Beeの利用者の方々のほとんどは、国分寺生まれの国分寺育ちだ。山内さんは、生まれ育った場所で一生幸せに暮らすのが、障がい者の方々にとって一番よいのではと考えている。
「どうしたら地域の中で彼ら・彼女らが生きていけるか、常に考えています。だから、地域でイベントがあったら、彼ら・彼女らと一緒にできるだけ手伝うようにしていますし、毎朝家からここまで通うのにも、公共の乗り物を使ってもらうようにして、地域に溶け込んでいける機会をつくるようにしています。」
残念ながら、障がい者の方々に対する差別や偏見は未だに根強い。そんな世の中だからこそ、彼ら・彼女らが生まれ育った場所で幸せに暮らしていくためには、地域の理解が不可欠なのだ。
「地域の理解を得るためには、我々も地域の方に歩み寄らなければならないと思うんです。地域のイベントを手伝ったり、地域ならではの石鹸をつくったりするのは、こうした想いからです。将来的には、地域の方々と共生できるような場づくりをしていきたいですね。」
「地域の調和」を目指すAnn Beeは、ミツバチが花と花とをつなぐように、障害をもった方々と地域とをつなぎ、まちに笑顔の花を咲かせている。
多摩信用金庫からのメッセージ
山内さんは、障がい者の方々の自立支援を目的に創業され、事業と地域を繋ぐものとして、地元の名水「真姿の池の湧き水」を使った『東京玉造小町石鹸』を作られました。多摩の魅力を発信する当金庫主催の「多摩の物産&輸入品商談会'09」に出展され、この石鹸が見事「多摩の逸品'09」を受賞されました。
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