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"モデラー"という仕事に魅せられて-歴史あるまちで本物の家具を
 ~株式会社ヨコハマモダンスタイル 
   代表取締役 青木和人(あおきかずと)氏

2010-12-27

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大学時代に家具に魅せられて以来ずっと家具一筋でやってきた、株式会社ヨコハマモダンスタイル代表取締役の青木和人さん。
2003年に起業するまで、家具業界でさまざまな職を経験してきたが、独立したいという想いはずっと持っていたという。"ヨコハマモダンスタイル"という独自の視点で家具を展開している横須賀出身の青木さんが、独立のステージにわざわざ横浜を選んだのには、理由があった。



建築家の家具に魅せられて

大学時代は建築学を学んだ。卒業後は設計事務所やゼネコンに就職する仲間が多い中で、青木さんは、何の迷いもなく家具メーカーに入ることを選んだ。
「インテリアデザインは勿論、家具も手がける建築家が好きで、学生の時に家具にすっかり魅せられちゃったんです。」
家具メーカーには、製作を自社工場で行うところと外部委託するところの2種類がある。家具を工場で量産するためには、試作・開発を何度も繰り返し行うことが必要になる。しかし自社工場をもつメーカーでも、試作・開発を全て自前でできるところは、実は国内には少ない。デザイナーのデザインを具現化する"モデラー"という職種があり、メーカーはモデラーがいる会社に試作・開発をお願いしているのだ。「メーカーは自分たちの中で完結できるもんだと思ってたら、違ったんです。勤めてからはじめて、モデラーという、特別なことをする人たちの存在を知りました」



モデラーに惚れ込む

新人だった青木さんは、企画・開発を担当していた。家具の試作をモデラーに依頼する立場だ。「よくモデラーのいる工場に行っては、朝から晩までそこにいました。自分の会社よりもそっちの方に長い時間いたんじゃないかな(笑)」
朝から晩までいると、工場のいろんなところが見えてくる。たくさんの会社から依頼を受けて、ありとあらゆる試作品をつくっていたのだ。
「全く違う家具がどんどん作られていくのを見て、すごいなって思いました。こんな1社が、なんで10社、20社の試作・開発をやっているんだ!?って。完全にそっちに魅せられちゃったんですよ。」
モデラーたちの職場に惚れ込んだ青木さんは、2年間勤めた家具メーカーを辞め、モデラーの下で家具を一から勉強することに決めた。
モデラーの仕事は、一言で言うと、デザイナーがイメージしたものを形にすることだ。
デザイナーが思い描くものは、図面だけでは表現できない。素材の特性や出来上がった家具の使い心地、耐久性なども考慮しながら、そのデザインをどうやって形にしていくかを考え、デザイナーに提案していくのが、モデラーの腕の見せ所だ。
モデリングの楽しさにのめり込んだ青木さん。その会社には16年間勤めた。
ありとあらゆる空間のための家具を手がけたので、木材、金属、塗装、ガラス、石、革、布......、あらゆる素材の知識が身についた。
「そうやって培ってきた知識と経験があるから、なんでもこい!って言えるんです」
16年間で身に付けたものは、青木さんを今も支え続けている。



独立を夢見て

独立したいという想いは、ずっとあった。
「工場に転職した頃からずっと独立したいという想いはありましたね」
工場でモデラーとして働いていた頃、家具が仕上がったところにたまたまクライアントが来て、その仕上がりを見て喜んでくれたことがあった。
家具作りはおおまかに、設計事務所や家具メーカーがクライアントから相談を受け家具をデザインし、モデラーがそれを具現化する、という流れで行われる。モデラーが最終的なお客さまであるクライアントの顔を見ることは少ない。クライアントの喜ぶ顔に出会えた時、青木さんはやりがいを感じた。
1-2.jpg 「最終的なお客さんが満足してくれたっていうのを知ることができたのがうれしかった。同じことを、独立して個人でできないかなって思ったんです。間に誰も挟まない。全て私がやる。ぜひそれをやりたいなと」
独立前最後の3年間は設計事務所に身を置いた。海外のデザイナーを起用し、デザインを形にして、建築やインテリア、プロダクトをプロデュースする会社だった。
「それまでは設計事務所から仕事をもらう製造会社にいたんですが、そういう一部分のところだけしか知らないと発想が小さくなっちゃうんですよ。設計事務所に移ったことで、それぞれの立場の気持ちとビジネスの理屈がわかるようになった。世の中つながったな、って思いましたね」
あらゆる立場で経験を積んだことで、広い視野と発想力を手に入れた青木さんは、43歳で独立を果たした。



師から学んだ「逃げない心」

青木さんには、「自分にとって、仕事の上でも生きていく上でも、師」と仰ぐ人がいる。16年間勤めた会社・株式会社ミネルバの社長、宮本茂紀氏だ。宮本氏は日本の家具業界におけるモデリングのパイオニアであり、モデラーの第一人者である。
次から次へと工場にやってくるそうそうたる内外のデザイナーたちを相手に、対等に、パートナーとして家具を作り上げていく「師」。「モノを具現化したい、いいモノを作ろう」という想いを常に熱く燃やし続けるその姿を見て、モデラーという仕事に強く惹かれるようになった。
師匠から学んだことは、モデラーという職の魅力だけではない。仕事をやるうえで、逃げない、失敗を恐れないという発想も、師匠が教えてくれたものだ。
「失敗を恐れずにこなしていけば、そこで得たノウハウをほかで活かせるってことを、宮本氏が体現してくれました。辛い時は逃げずに、どうしたらチャレンジできるかを考える。そういう発想は、宮本社長から学びました」



時間はかかる、それでもやりたい

実際にやってみたら、ものすごく大変だった。お客さま個人の生活スタイルや好みをしっかり理解しないと、提案できないのだ。テーブル1台にしても棚1台にしても、どこに置くか、素材はどうするか、予算はいくらか、まわりにおいてある家具はどんな色と形か、小さいお子さんはいるか......などなど、ありとあらゆる要素ができあがる家具のイメージに影響を与える。
「だから、簡単に『作りましょう』っていわないようにしてるんです。」
日本は家具の歴史が浅い。ヨーロッパでは家にも家具にもこだわる文化があるが、注文住宅自体が少ない日本では、家はもとより家具に対して知識がないのは当然のことだ。
「深く考えないで注文する人がまだ多いんですよ。だからお客さんにはいつも、何が欲しいんですか? 本当に必要ですか? って聞くようにしてます。」
いい家具を作ることはもちろん、それを使い続けることにも、青木さんはこだわる。「日本では、家具はありものを買うものだって意識が定着してるけど、オーダーメイドで家具をつくる文化を浸透させたい。それと、古いモノはメンテナンスして使い続けることが大切っていう意識も広めたいです」
元の作りが簡易なためにメンテナンスできない家具もあるが、それでなくとも、メンテナンスして使い続けようという認識がない人が世の中には多い。手を加えればモノは生き続ける、どんどんいい味になっていくことを、知ってほしい。



横浜をわがまちに

独立後の拠点として横浜を選んだ。生まれも育ちも横須賀なのに、なぜ横浜にしたのか。一番の理由は、生活と仕事のバランスのとりやすさだ。取引先とのやり取りは、やはり横浜の方がやりやすいという。
10-2.jpg 「横浜には、昔からある建物を修復・保存して使うという気風みたいなものがあるんですが、そういう土壌だからいいっていうのもあるかもしれませんね」
古い建物を残して活用しようという動きは、家具を修理して再利用するという意識にも通じるものがある。家具は、手を加えれば生き続けるものだ。古いモノを直して使うことの大切さを知っているまちだからこそ、横浜は青木さんにとってしっくりくるまちなのかもしれない。
「学生時代から横浜には友達が多かったし、遊ぶ時はいつも横浜でした。だから横浜は昔から知ってるし、好きだし。死ぬまでここを離れないでしょうね。あと、海が好きで。よく自転車で朝散歩に行くんですよ」
好きなまちで働けば、仕事もはかどるというものだ。そんな青木さんの事務所の1階には、お気に入りのロードバイクが置いてある。
事務所のビル、の1階はバーにしようと計画中だ。
「昼間は打ち合わせして、夜はちょっと飲んで。仕事が一段落した時は打ち上げなんかもやりたいしね。職人も含めたネットワークづくりの場にしようと思って。」
自分自身の仕事も創り手あってこそのもの。だからこそ、職人とのコミュニケーションをもっととって、創り手とともにやっていきたいと想う。若手を育てたいと想うのもそのためだ。
「若い、仕事量や経験の少ない職人にひとつでも多く違う仕事を経験させたいですね。まだまだ少ないけれど、少しずつ、育ってきていると思います」
本物の家具を作ることと、それを大事に使い続けること。青木さんの発信する家具の新しい文化が、横浜の洒落た海風にのって日本全国に広まる日は、そう遠くないかもしれない。



横浜信用金庫からのメッセージ

経歴からもわかるように、青木さんはプロデューサーとしての能力に恵まれた方です。家具のオーダーメイドというニッチな分野に特化して、ユニークな活動を続けていらっしゃいます。横浜ベイスターズの大ファンでもあり、横浜がとても似合う方だなと思います。

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