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地元じゃないからわかる良さ
-仙台からぬくもりあるアンティーク家具を
 ~ヨーロッパアンティーク家具・雑貨HYGGE(ヒュッゲ)
  沼倉透(ぬまくらとおる)氏

2011-04-27

Hygge沼倉氏

HYGGEは、仙台にあるヨーロッパアンティークの家具と雑貨を扱うお店だ。その代表である沼倉透さんは、出身地ではないにもかかわらず仙台というまちに惚れ込み、長年の夢であった独立をこの地で果たした。当初は30歳での起業を目指したが、34歳で夢を叶えるまでには、転職に転職を重ねた長い苦労の道のりがあった



目標は「30歳で独立」

沼倉さんは東京都出身。中高生時代を福島県の郡山で過ごし、大学時代は仙台に移り住んで福祉の大学に通った。家具への関心を持ち始めたのは25歳の頃からだ。
「バイトを辞めようかってことになった時、家具か陶芸をやって生きていきたいなと思って。家具とかインテリアがすごく好きで、陶芸よりも食べていけそうだなと思ったので(笑)、家具を選びました」
家具を仕事にすることを決めた沼倉さんは、早速東京へ向かった。
「まずは家具屋で働いてみようと思って、とにかく東京に出て家具屋を回りました。何軒かに雇ってくれないかって話をしたんですが、結局どこからも返事が来なくて(笑)。そうしているうちに、家具を売るんじゃなくて、つくる方をやりたいなと思うようになって。仙台に家具づくりをしている若い方がいたのを知っていたので、その方を訪ねてやってみることにしました」
沼倉さんは仙台に戻り、その家具店で繁忙期の助っ人として雇ってもらえないかお願いした。この店の他にも並行して、工務店などで、同じように助っ人として働いた。
「しばらくそういう生活を続けて経験を積んだ後、今度は工務店で、助っ人ではないかたちで働くようになりました。30歳までに独立したいという想いがあったので、それまでできるだけたくさん経験を積もうと思ったんです」
バイトを辞めて自分の進む道を決めたタイミングが25歳頃だったのも、30歳までの独立を考えてのこと。経験を積むために、働くフィールドをいろいろ変えては、経験と技術磨きにいそしんだ。



日々の糧と夢の両立

常勤の社員として工務店で働くようになった沼倉さんだったが、ここで現実を目の当たりにすることになる。
「工務店でつくっている家具は、実はひどいものでした。イスにしても机にしても、木がスカスカなんです。ちゃんとした家具をつくりたかったので、がっかりすることもありました」
工務店の現状を目の当たりにした沼倉さんは、自らの理想とする家具づくりを学ぶため、家具専門の工房に入った。
「工房では1年ほどお世話になり、家具づくりについてひととおり学べたので、その経験を活かして、ようやく個人で家具をつくってみるようになったんです。家具だけではもちろん無理なので、店舗の内装工事なんかも請け負いながら。でも、やっぱり食べていくのが難しくなってしまって。それで、また別の家具屋さんで働く生活に一度戻しました」
HYGGE沼倉氏 アンティーク家具ショップが仙台の北にあるのを見つけ、そこで修理や配送の担当者となった沼倉さん。「そこで働いている間に、デンマーク大使館主催の家具業界の研修旅行に参加するチャンスがありました。デンマークでは、家具やデザイン関連の産業の育成に、国を挙げて力を入れているんです。本場で見た家具は、どれもこだわりの素材や洗練されたデザインでつくられていて、すごく刺激的でした。家具のもつ魅力をあらためて、しみじみと感じました」
デンマークにはその後も個人的に訪れ、実験的に家具を輸入したりして経験を積む。
アンティーク家具ショップに勤め始めて4年、沼倉さんにとって待ちに待った瞬間が訪れた。
「ショップを辞めたタイミングで、やっと独立を果たしました。独立は長年の夢でしたが、お金が貯まったからというよりは、このお店で学びたかったことを十分学んだので、次のステップに進むべき時が来たと思った、というのが大きかった気がします」
わずかな貯金と、両親からの援助、金融機関の創業者支援ローンを起業資金として、2006年、沼倉さんは念願の「スタートライン」に立った。34歳の時だった。



地元じゃないからわかるわがまちの良さ

起業の舞台として選んだのは、出身地の東京でもなければ、育ったふるさと・郡山でもなく、仙台だった。
「郡山は商売に向いていないように思えたんです。人口が少ない割になぜか家具屋が多くて。東京という選択肢も少し考えていました。今でも時々、お店の形態を移そうと思ったりすると考えますけど、家賃が高くて固定費がかかるので難しいなと」
郡山も東京も難しいので、消去法で起業当時に住んでいた仙台にしたということだろうか。
「仙台を選んだのは、その時住んでいたということももちろんですが、いいところだからです。すごくいいところなんですよ、仙台って!」
沼倉さんの言葉に熱がこもり、目がぱっと輝く。
「地元じゃないから、そう感じるんだと思うんです。地元の人って逆に意識しないみたいなんですよ、仙台がすごいいいところだって。東京に2時間かからずに行けるし、他県に行かずとも仙台のなかで本当にいろんなことができる。車でちょっと行けば渓流釣りができるし、温泉もいっぱいあるし、スキーにも行ける。こんなまちは日本の中でもあんまりないと思うんです。まちの規模もちょうどいいですし、食べ物だって、何を食べても美味しいですし」
 「地元」でないからこそ、そのまちの良さがわかり、惚れ込むことができる。沼倉さんにとって仙台は、出身地でこそないが、思わずその魅力を熱弁したくなってしまうほどに大好きな、愛すべき「わがまち」なのだ。好きなまちで開いたお店だからこそ、仕事に注ぐエネルギーもいっそう湧いてくるのかもしれない。



今後の展開~悩み多き時期

現在、お店ではフランス、イギリス、北欧など、ヨーロッパ各国から雑貨や家具、古道具などを輸入し販売している。お店は沼倉さんと奥さんの2人で切り盛りしている。
「お店を開けるのは午後からです。通信販売をしているので、Webサイトに商品の写真を載せているんですが、その写真を撮るのに結構時間がかかって大変なんです。閉店後から撮り始めて、翌朝までかかっちゃったりして」
お店の中は、イスや机はもちろん、地球儀から本、アクセサリー、胸像にいたるまで、実にさまざまな魅力的な品物で埋め尽くされている。確かに、これを片付けて撮影スペースを確保するだけでもかなり手間がかかりそうだ。
店内の様子 「でも、サイトをつくること以外には、特に自分からは宣伝していません。雑誌やWebで取り上げていただけることがあるのですが、先方から声が掛かって、取材に来てくれるんです。この地域で珍しい業態だったり扱っているものが個性的だったりするから、向こうから取材に来てくれるんだと思います」オリジナリティを大事にすることで、メディアからも自然と注目を集めることができるというわけだ。おかげで、宣伝にそこまで時間をとられずに済む。
「地域内では配送も行っていますから、それにも時間をとられます。けっこう1日ばたばたしている感じですね(笑)」
そんな忙しい毎日を過ごす沼倉さんだが、やりたいことはまだまだたくさんある。
「倉庫がほしいんですよね。お店の中がすっきり片付いている方が、逆に売れたりするんです。それと、販売だけでなくリフォームや店舗の内装なども扱って、幅を広げていきたいと思っています。リースにも力を入れていきたいですね」
撮影やディスプレイなどに使うため、アンティーク家具のリースに需要があるという。「リースの価格は通常販売価格の何割、という風に決めるんですが、リースのために販売価格を高めに設定しているお店が結構あるんです。最初から、売ることよりもリースすることを想定しているわけです」数回同じ家具を貸し出せばそれだけで元を取れてしまうので、単純に販売するよりもいい。リースに注力するうえでも、倉庫はぜひ欲しいところだ。
「それと、カフェを併設したいなんて話もしています。カフェでゆったり時間を過ごしていただいて、帰りにお店の方にも寄っていただく。今はまだ人が足りないので、これからなんですけど」
とにかく今は、人が足りないのが一番の悩みだ。商品の撮影もWebサイトの更新も、配送も買い付けも、全てを奥さんと2人でやるのはかなりの重労働だ。
「買い付けた家具がコンテナで届くんですが、それをお店に運び入れるのがまた一苦労で。トラックの運転手さんに手伝ってもらうとお金がかかるので、結局2人でやるんですが、腰とかが痛くなっちゃったりして(笑)。妻にお店を任せて自分が仕入れる、みたいに分業もしたいんですが、これからですね......」 事業は展開していきたいが、展開するには人が足りない。しかし、人を雇うにはコストがかかる。2011年、HYGGEは創業5周年を迎える。悩みは多いが、それも経営の醍醐味。沼倉さんとHYGGEは、今まさに次のステップへ踏み出そうとしている。



宮城第一信用金庫からのメッセージ

私が沼倉さんの担当になり、最初に訪問させていただいたのは一年ほど前のことです。その時、輸入家具を初めて目にした私は「個性的なお店だなぁ」と強い印象を受けました。さらに直接海外へ行き仕入れをされる行動力にも驚きました。お伺いするたびに、輸入家具の魅力や今後の事業展開などをお聞きすることができるので、とても楽しみにしております。
 東日本大震災後も復興に向け、奥様とお2人でお元気に経営していらっしゃいます。今後も沼倉さんの夢の実現のため、微力ながら、みやしんの一員として支援させていただきたいと思っております。




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この物語は、東日本大震災以前の取材をもとに作成したものです。
このたびの震災では、仙台市内にあるHYGGEの店舗も被害を受けられたそうですが、沼倉さんも奥様もご無事でいらっしゃり、既に営業を再開されているとのことです。
沼倉さんご夫婦とHYGGEの益々のご活躍、そして被災地の1日も早い復旧を、心よりお祈り申し上げます。

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tags: HYGGE, アンティーク家具, 仙台, 沼倉透

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