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しんきん地域づくりラボ > わがまち起業家!発掘プロジェクト > わがまち起業家物語 > "起業"と"企業"のマッチングで地域をバックアップ-全国に広がるやわらかいタコが人の心をやわらかくつかむ ~はますい株式会社    代表取締役 浜本 義夫(はまもと よしお)氏

"起業"と"企業"のマッチングで地域をバックアップ
-全国に広がるやわらかいタコが人の心をやわらかくつかむ
 ~はますい株式会社
   代表取締役 浜本 義夫(はまもと よしお)氏

2011-08-03

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増毛郡増毛町は、北海道で有数の歴史ある漁村。増毛(ましけ)の語源は、アイヌ語の"ましゅけ"で、カモメの多い所という意味。カモメが集まるということは、魚がふんだんにいるということであり、多彩な海の幸の宝庫なのである。その増毛で期待を集めているのが、特許製法『蛸(たこ)の肉質軟化方法』を開発し、はますい株式会社を起業した浜本義夫さん。ひと噛みで噛み切れる、不思議なほどやわらかいタコづくりの秘訣とは...。



タコも組合もやわらかく

浜本さんは、もともと漁師ではなく、増毛漁業協同組合の職員だった。8つの課のうち3つの課長を兼務し、20数人の部下を抱え、仕入れから加工、流通、販売に至るまで、組合の改革派・行動派としてアイデアを出しながら、組合長の右腕として34年間勤め上げた。
そんな浜本さんがやわらかいタコを作ろうと思ったのは、お父さんの一言がヒントになったから。「タコは硬いな。うまいんだけど、日持ちもしない。やわらかいのが作れたらなんぼでも売れるんだろうな」

タコは、収穫してから8時間以内に加工しないと硬くなり、また冷凍すると水分が固まるため日持ちしない。では、どうしたらいいのか...。そこには「細胞の中の水分を取り除くという発想が必要だった」

平成5年、組合の仕事の合間を使って、やわらかいタコの開発に取り掛かった。保守的な組合からは「仲買などとの摩擦が大きいから、やめてくれ」と反対された。「組合は漁民のためのものだろう?自分たちの権利を守るために抵抗していたら発展しない。このままでは、漁師も組合も立ち行かなくなってしまう。いいものを作る努力をすれば、みんながよくなるんじゃないか」。浜本さんは信念を曲げなかった。組合の協力を得られない中、自費で開発を続け、試行錯誤を繰り返した。漁師だったお父さんは、市場に出せば売れるタコを惜しげもなく提供してくれたうえ、実家の釜を使わせてくれた。そして平成7年、『たこのやわらか煮』が完成した。開発するまでの2年間に、あわせて約2トンのタコを煮た。「実家の一族の協力がなかったら、できなかったですね」

平成9年には、製法特許を取得。タコは普通1キログラムから700~730グラムの加工品ができるが、この製法では水分を抜くために約500グラムしか作ることができない。単価が高くなることになり、また反対もあったが、組合長だけは良き理解者だった。そして、『たこのやわらか煮』は組合事業として製造することが認められた。しかしそのうちに、浜本さんはだんだんと限界を感じるようになっていく。「収穫量が多ければ作れ。少なければ仲買に回すので作るな。これでは注文に対応できない。こんなに制約されるんだったら、組合内で作り続けるのは無理だ」

そして、平成16年、「みんなに迷惑をかけるかもしれないけど、地元に残す企業にしたい」との強い想いから独立した。



安心・安全を提供するサイクル

「タコは300円を切ったら漁師は割が合わないから、ここでは、そんな値段はつけられない」。組合に長く勤めていた経験から、浜本さんは、漁師とともに歩んでいきたいと考えている。「確かにうちだって安く買いたいけど、叩いて安く買うことで、漁師がみんなやめて、いなくなっちゃったらどうしようもない。そうやって最終的に自分の首を絞めるようなことはしたくない」

 漁師のことを想って値段をつけると、漁師もきれいに洗って自信を持って出せるタコを納めてくれる。そうすることで、すぐに煮ることができる。「そういうサイクルって絶対あるからさ」

増毛でおいしいタコが獲れる時期は、夏。同社では、6~9月に収穫されたミズダコをまとめて仕入れ、150トンの保管庫に冷凍保存し、1~4月まで毎日煮ることで1年分を作ってしまう。普通は保管庫で数日かけて冷凍するものであるが、同社には海水も冷凍できる"-35℃急速凍結庫"があり、海水を使って瞬時に冷凍しているため、品質を落とさず、冷凍やけもせずに保存できる。

hamasui-2.jpg また、同社の加工工程には、普通300~400の細菌数を10程度に大幅に削減する"除菌技術"がある。浜本さん自ら「普通に考えたら神業」というほどの技術。「うちは安心・安全を提供する会社としてやっているので、そこまでやらなきゃダメなんです」

特許製法に、"-35℃急速凍結庫"と"除菌技術"が上乗せされることで、翌年分のタコを前年夏に仕入れることができている。「最初は作って売らないと仕入れることができなかったから大変だった。今は1年前に仕入れられるようになって、まったく変わった。お金は先に出るけど、営業力が出てくるし、安定することでサイクルもきれいに回る」

「他の会社は生からしか作れないけど、うちは生からと冷凍からの2種類がある。だから大量生産ができるし、注文にも対応できる。お客様の要望によってどういう加工もできるということも強みの1つですね」



最後まで残る本物を目指して

 『たこのやわらか煮』をはじめとした同社の商品は、主に郵政の"ふるさと小包"通販で販売されている。「郵政事業は、注文数の年間予定表が送られてくるんです。うちは、それに向けて作るので、計画を立てやすい」

 ただし、クレームが入ったりすると、すぐにパンフレットから外されてしまう厳しい現実があることも確か。年に1~2回、「タコがやわらか過ぎる。どうやって煮てもこんなにやわらかくならない。何か変なものを使っているんじゃないか?」といった問い合わせがある程度で、クレームはまったくない。反対に、外された会社の代わりに他地域のパンフレットに入れることがあるくらいである。「厳しい時代だけど、本物は最後まで残るはずですから」



大切な従業員教育

組合に勤めていた頃から、"教育だけは欠かせない"というのが浜本さんの信条である。

「業績を伸ばすためにはいろいろな方法があると思うけど、やっぱり急がば回れだと思います。確かに経験者を入れれば楽なのかもしれないけど、そんな甘いものではないと思う。人の口に入るものだから、いいかげんな気持ちではダメなんです。だから、うちは地元の若い子を一から仕込んでいきたい」。従業員・パートは気心の知れた地元雇用にこだわっている。「どんな職業でも、最初の2~3年は飯を食べさせてもらっているのと同じ。だから教育は大事なんです。3年目以降は、自分の給料は自分で稼ぐっていう意識がなくてはいけない。うちの従業員にはそういう心持ちを持ってやれ、と言っています」

hamasui-3.jpg  創業6年を迎え、従業員教育も軌道に乗った実感がある。「今までは私がいろいろと采配していたけど、工場長も26歳になって、全てができるようになった。思ったとおりクレームも出ていないし、このまま新商品開発などもしながらやっていって、地域に貢献できればいいなって思います」

新商品開発は、いつも奥様といっしょに行っている。『たこのやわらか煮』には、定番の醤油味と梅味のほかに、わさび、キムチ、カレー、甘酒、ドレッシングなど、さまざまな味付けがある。試作した新商品の味見をするときは「いつもケンカしているよ(笑)」



2つの"キギョウ"を兼ね備えて地域を活性化

「これからは組合や漁師と話し合ってやっていかないとダメな時代」。そう浜本さんは言い切る。「ここは保守的なまちだから、なかなか先行して盛り立てていこうっていう人がいない。これからは漁師も巻き込んでやっていく。俺はそういう底上げが好きだからさ」。増毛の三本柱は、タコとエビとホタテ。タコは『たこのやわらか煮』で道が開けた。浜本さんは、これからはエビとホタテをなんとかしていきたい、と思いを巡らせている。

 「大事なことは"起業"と"企業"がマッチングしなければ、地域は回らないってことじゃないかな。自分だけ良ければいいのが"起業"で、地域のみんなを巻き込んでいくのが"企業"。その2つの"キギョウ"を兼ね備えて、地域をバックアップしていきたい。このとおり、がさつに見えるかもしれないけど、目指す道はひとつ、2つの"キギョウカ"を目指すことなんです」

浜本さんが好きな言葉は『今日無事』。「ずっと無事でいられるかはわからないから、まずは『今日無事』。明日になったら改めて『今日無事』。その積み重ねでやっていきたい。たこは足が8本あるからね、2~3本引っ張られてもびくともしない(笑)。これからもそういう感覚でものづくりをしていきたいと思います」



留萌信用金庫からのメッセージ

とにかく熱い!超多忙のはずなのに会えば時間を忘れて将来の夢や、地元にかける思いを語る姿から、浜本社長の深い郷土愛がひしひしと伝わってくる。感心させられるのは、自分の商売だけがうまくいっても地元が疲弊しては意味がない。みんなが暮らしていける仕組みを考えないと、という思い。55歳で起業した際、当金庫に語った熱い思いそのままに、今もその意欲と常に前向きに考える姿勢には頭が下がる思いです。社長!これからもファイト!

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