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溢れるアイデアは無尽蔵-活かせ阿南のLED!
 ~株式会社シナジーテック
   代表取締役 大栗克俊(おおぐりかつとし)氏

2011-10-12

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"イルミネーション"と"植物工場"、この二つの事業に共通するのは、消費電力が少ない第4世代の明かりとして脚光を浴びている"LED"を活用していることだ。徳島県阿南市の基幹産業であるLED。この地元の資源と、自身がこれまで培ってきたソフトウェア開発のノウハウとネットワークを活かして事業展開する株式会社シナジーテック 代表取締役 大栗克俊さん。その柔軟な企業経営から学ぶべきものは多い。



1.大学中退~ソフトウェアの会社就職~起業~モノづくりへ

大学在学中の夏休みに、東京で建築用のソフトウェアを開発するアルバイトを始めた大栗さんは、仕事にのめり込んでそのまま大学を中退、その会社の仕事を続けることにした。5%のロイヤリティが約束されていたので、大栗さんは、ほどなくしてまとまったお金を手にすることができた。それを元手に出身の徳島県でソフトウェア会社を立ち上げることにした。1988年、大栗さん26歳のときだ。1999年頃のITバブルの時には年商1億円に達したが、間もなく市場は急激に収縮、業績が下がる一方となる。
「財務状況が悪くなるなか、目に見えないソフトウェア事業では、その事業内容が理解されにくいことから、資金を調達することが難しくなってね。その時、これからはモノとノウハウをセットにした、目に見えるものでビジネスしていかないといけない、ということを痛感したんです」と大栗さん。
こうして、目に見える"モノづくり"の道を探ることにした大栗さんは、「地元阿南には日亜化学工業株式会社が製造するLEDがある」と新たな方向性を見出した。そして心機一転、会社名を現在のシナジーテックに改めると、新たな挑戦をスタートさせた。



 

2.青年会議所の"ひかりのまちづくり"

 

新たな道を模索している頃、大栗さんは同業の先輩の薦めで阿南青年会議所の会員になった。
「個性豊かな人たちばかりでした。景気が悪くて暇だったせいか(笑)、まちづくりや青少年育成などの社会貢献活動にみんなで熱心に取り組みました」と大栗さんは懐かしそうに話す。
 LEDを使ったイルミネーション事業に深く関わっていくのも、青年会議所の活動に端を発している。「まちを元気に明るくしたいという想いから始まった事業で、地元の資源であるLEDを使ったイルミネーションで地元を明るくしようと。まずは、まちの中心にある牛岐城(うしきじょう)跡公園の小高い山の階段を飾ることからスタートしました。日亜さんから協賛としていただいたLED3万個を3カ月かけてアルミ枠にハンダ付けしました」
画像 080.jpg 冬の夜、LEDのイルミネーションが点灯されると、その神秘的なひかりに来場者は魅了された。これが評判となり、商店街の商店主たちなど地元の人たちの手によって、この取り組みは年々拡大していった。



3.光環境デザイン~シナジーテックのイルミネーション事業

 

事業が広がりを見せるにつれ、資金や継続性、発展性の点から、青年会議所が窓口となって進めていくことが難しくなってきた。事業を継続的に発展させていくには、ボランティアで続けていくのも難しい。大栗さんは、当初からこの事業に関わってきたメンバーと2004年に「光環境デザイン」という会社を立ち上げた。
「イルミネーションについての依頼は、光環境デザインが窓口となって受けるようになったので、新たな事業展開がしやすくなりました。メディアでも紹介され、国内だけでなく、韓国やドイツといった海外の国からも声がかかるようになりました」
同社の創設メンバーは、それぞれの専門に基づく仕事を持っている人たちだ。ソフトウェアプログラマーの大栗さん、デザイナーの板東孝明さん、電子基盤の設計者の近藤敏則さんの3人。イルミネーションの依頼があるとこの3人で開発し、製作はシナジーテックが請け負っている。
ソフトウェア会社のシナジーテックは、この事業を請け負うことでものづくりの側面を持つようになる。地元のLEDを活用し、モノとソフトウェアを組み合わせた商品の開発を模索していたが、その答えの一つがLEDのイルミネーションだ。
「音楽に合わせてLEDを点滅させるソフトウェアを開発して、イルミネーションのオブジェに組み込んでいます。つまり、目に見えないソフトウェアの価値を、光の点滅という目に見える形で商品化したというわけです」



4.植物工場事業

今ではシナジーテックの事業の柱となっているイルミネーション事業だが、この事業は年末に集中するので、年間を通して続けられる事業として、LED照明による水耕栽培「植物工場」の事業化に着手している。植物工場とは、環境を制御して、野菜などの植物を計画的に生産する新しい農業の仕組みである。
画像 052.jpg  実は、大栗さんの実家は農家で、秋の収穫の頃になると大栗さんも作業を手伝っているという。「農業は本当に重労働です。農業従事者が高齢化していくなか、これまでどおりの農業が続けられるのかと、日本の農業に非常に危機感を持っています。そこで、若者でも、パンプスを履いた女性でもできる農業、というコンセプトで「植物工場」の事業を始めてみたんです」
 「大手企業も植物工場に取り組んでいますが、過剰設備になっていて、農業者目線からどんどん遠ざかっています。僕は農業者目線で、過剰な設備は排除し、無駄な投資をしないで済むようにと考えています。そうすれば、それなりのニッチ(隙間)があると思うので、そこに向けて集中的に展開していけば市場を掴むことができると思っています」
シナジーテックの植物工場の独自性は、照明にLEDを使っていることと、小スペースで栽培できることだ。さらに、植物工場をアートに活かすことも試みている。2010年、東京ドームに設置したイルミネーション『Green Sphere(グリーン スフィア)』は、イルミネーションと植物工場を融合させたオブジェ。環境を意識し、太陽と地球をイメージした壮大なものだ。独自の切り口が面白いと、中国やカナダからも問い合わせがきているという。



5.事業展開の勘どころ

(1)小さなモデルから始める

   新しい事業を展開する際、大栗さんが心がけているのは、まずは小さなモデルでやってみるということ。「新しい事業のアイデアが頭に浮かんだら、とりあえず小さなモデルでやって、上手くいきそうだったら、もう少し大きなモデルでやってみる。そして、何かが動き出したら人に声をかけてみる。これまでずっとそういう形でニーズをさぐりさぐりやってきました。何かが動き出すということは、そこにニーズが、市場があるということです」



(2)ありものでいい

「植物工場では、一定の室温・湿度に保たれた箱を作る必要があります。そこで、以前から繋がりのあった日本軽金属株式会社に相談してみました。同社が作っている携帯電話の基地局の箱が、こちらの希望に近いことがわかりましたので、これを標準部材にして、植物工場用に置き換えて作ってもらっています。つまり、ありものを上手に使うということです。従来からあるものを活用すればコストを抑えることができます。日本軽金属も植物工場単独での在庫を持たなくて済むので、双方にメリットがあります」



(3)オリジナル商品で勝負

「ありものを活用していますが、仕入れたものをそのまま売っているのは電源くらいで、あとはほぼ全部オリジナルです。オリジナル商品にこだわるのは価格競争に巻き込まれないため。オリジナル商品なら原価がわかりづらいし(笑)、相手がいないので価格競争に巻き込まれずに済みます。イルミネーションも光る枠組みだけではなく、自社開発の音楽に合わせて点滅するソフトウェアを組み合わせて、価値を付け加えることで利益を出しています」



(4)潜在意識に働きかける

「潜在意識に働きかけることも大切です。といっても、何も難しいことを考えているのではなく、新聞報道されるように話題を作るということです。新聞で取材されると、記事がネットのあちこちに転載されて紹介されるので、ネット検索に引っかかりやすくなります。そうすると、関心を持つ多くの人の心に働きかけることができます」



(5)組織のモジュール化

ソフトウェア開発により培われてきた考え方が、大栗さんの企業経営のベースになっている。モジュール化という考え方もその一つ。
「子どもが遊ぶブロックは、接続部分が同じ形になっているので、ブロックの色が違っていても接続することができますね。モジュールとは、このブロックのようなものです。組織をモジュール化しておけば、変えたい、追加したい、やめたいといった場合、その部分だけを変えたり、追加したり、やめたりすれば済みます。組織全体の形を変える場合も、モジュールの組み立て方を変えれば済みます。さきほどお話した「ありものでいい」というのもモジュール化の発想です」



(6)自由な職場

「会社の運営で難しいのは、どのような命令系統を作っていくかです。僕は、命令系統は一つでいいと考えています。ちょっと変な例えですが、僕は皆に「鳴け」というような命令をします。が、どのような声で鳴いてほしいかといった詳細な命令は出していません。つまり、どのような鳴き声を出すかは相手の自由です。社員にはかなりの自由があるというわけです。ですから、僕はどちらかというと社員は少なく、シンプルな組織の方がいいと考えています。シナジーテックは、僕を含めて7人です。全員で情報を共有しミッションを一つひとつこなしています。ミッションが大きくなり、もっと社員が必要になったらその時採用すればいい。パートで大丈夫ならそれで対応します」



6.今後の事業展開

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植物工場は、農業用だけでなく、観葉植物代わりに楽しんでもらうための卓上用としても商品化することを考えているという。また農業用の植物工場も設備を売っておしまい、というものにするつもりはないということだ。 「丈夫な苗、生育に適した養液、水温を一定にするなどの各種チューニング部品など、植物工場で野菜を生産していくために必要な物を供給する物流システムと、植物工場の生産者のための販売事業支援システムを作ろうかなと思っています。植物工場の利点は、計画通り生産することができることです。例えば、○月○日にレタスを10個納品してほしいとレストランが予約すると、植物工場の生産者はそれに合わせてレタスを育て、収穫したものを宅配便で送ります。このような予約受付を含めた販売事業支援システムによって、植物工場の生産者の市場づくりをサポートしていきたいと考えています」。エネルギッシュに事業のアイデアを語る大栗さん。頭から溢れるアイデアは尽きることがない。それはいつも利用する人たちの目線に立ってものを考えているからだ。



阿南信用金庫からのメッセージ

 

阿南青年会議所OBである大栗さん。誰よりも地元に対する想い入れは強く、その独創的な発想でこれまでも色々な事に挑戦し、そのチャレンジ精神と行動力には頭が下がります。
LEDを使用した植物工場を地元の新たな産業として育てるという壮大なプロジェクトも大栗さんなら可能であると信じております。


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